レッサーチートさんのレビュー

　私は異能バトルものにある不満があります。 　それは異能至上であること。未知の異能による闇討ち合戦と化していると感じることです。 　刀剣、銃火器に武術。数の力や交渉。お金、社会システムなど人々にとって大事なもの。尊くも恐怖の対象となる様々なものが毒針まがいの異能によって駆逐され続ける。もしくは異能者が無敵チートのようで他の攻撃が一切通じない。 　初期の三巻までぐらいならいいのですが、ずっと続くと不条理感が強くなります。 　小道具、ゲスト程度に従来の武力、交渉術が使われたぐらいではこの不満は払拭されません。 　しかしダーウィンズゲームはそんな不満を消滅させてくれます。従来の武器が勝敗を左右する戦場があり、交渉ができない者は小者か狂人の予備軍に見える。 　既存のものに敬意を払い活用する。ケダモノ以外となら話あいを行いそれを成立させて利益を確保する。 　それらを行ってなお輝く異能バトルは珍しく素晴らしいと思います。 　

　創作時代劇イコール江戸の町。そんな大勢に一石を投じた清涼の一作。 　大河に水戸黄門。小説ならば江戸以外の時代劇も多いでしょう。京都を舞台にした作品も、怪異がからんだ陰陽師ものならそれなりにあります。 　しかし本作の主人公は公家に仕える侍。しかも舞台は江戸時代の京都という稀少な作品。そこに文化人や骨董が加わり他に類を見ない異郷の雰囲気を味わえるのです。 　江戸中心の物語が悪いとは言いません。とはいえ御馳走も食べ過ぎては食傷になるもの。 　特になまぐさ坊主や傲慢貴族しか登場しない。かっこいいのは武士や無頼の徒が大半だったそこそこ昔の時期に現れた「公家侍秘録」 　清涼剤としても見識を広げるためにもおすすめの良作です。

　知識チート。響きはいいけど文化破壊。従来の商人・職人さんたち路頭に迷う。 　そんなことを念頭にささやかな商売をする。冒険者モドキ傭兵を相手にリサーチを開始する第三巻。 　転移チートはどこ行った。それ以前に爆裂娘がオトナシイ？(他の巻と比較、ゴロツキしか倒してない)せいぜい◯◯が爆誕したり権利者とのパイプが確立しただけ。 　 　嵐の前は異色の異世界交流。無双嫌いのかたにおすすめの１冊です。

　２周目だけど知識チートではない。財宝チートとせいぜい地理と歴史情報にボーナス。 　そんなまあまあ強い新伝説の魅力は悪友セランがいること。主人公カイルと完全に同格な強さを持つ、昨今ではURなキャラクター。 　肉壁にするには惜しい。殿からジャイアントキリングまでなんでもござれ。だがセランの真骨頂は英雄カイルをキレイにすること。 　カイルが裏工作を行い、家族でもめてシまらなくても大丈夫です。悪友セランが卑劣の息を吐き、母親と毒を交わし恥をさらせばあら不思議。 　微妙なチート主人公も味のある魔法剣士に見えてくる。そんな凸凹コンビと心の広いヒロインたちが織り成す。ルアル系レトロ風のサーガを楽しみましょう。

　２周目勇者だけど知識チートではありません。 　滅亡の未来を変えるため過去にタイムリープした勇者カイル。だけど未来を変える行動を取ればとるほど、既知の情報が変わっていく。というか歴史の闇、初対面の人材?に戦友の個人事情。知らないことは多く、戦闘チートは使えないありさま。 　それらと一周目ではやらなかった交渉をせねばならず、ほぼ未知への冒険サーガ。全知の無双はできません。 　英雄らしいズルや凶暴さもあり。どこかしまらない冒険者の要素が笑いをとる。人間らしい今昔ヒーローのコラボが楽しいです。