テニアンさんのレビュー

三国同盟転じて連合国入りしたイタリアの微妙な国情(ドイツに対する贖罪？)が何となく伝わってくる。 製作費に糸目をつけない、何もかも重厚なのがイタリアらしくて良い。

虜囚生活が舞台の作品は西洋では『戦場にかける橋』、邦画では『ビルマの竪琴』など数多く製作されている。 これらをすでに鑑賞済みであれば折り目正しい新品の衣服を着用していることや『一日の食事が黒パン1切れと具がほとんど入っていないスープのみ』にもかかわらず出演者は餓えとは縁遠い肉体をしています。この辺りが・・・。撮影後の画像編集で加工してもいいのでは？ 異国から来た外国人は拡大解釈すれば全て監視対象になってしまうので渡航先がどこの国であろうと油断はできませんよ！ということでしょうか。

昭和60年頃になると『懐かしい』『夢があった』と美化されてしまう情景。 将来の不安は進学で解決するという手法は正解だったのでしょうか？令和の時代、大学無償化という誘い文句に通ずる何かを感じます。 スポンサー(？)の○○新聞はさすが現実に敏感でいい内容です。

左翼的な描写を完璧に排除して工場(と工場で働く人々と家族と生活環境)を映像化する技術は素晴らしい。 対決を煽るのも表現のひとつにすぎないのだとハッとする。

未成年と高齢者の比率が令和の時代と真逆。もうこのような時代は来ないのかもしれない。 またまだ大正色が濃いなぁと感じる。明治時代生まれが現役世代だから当然である。

無人島がロケ撮影地ならばともかく、明確に地名を出さず、その地の登場人物が方言を使わないので不自然この上ない。なので、『南部バス』は実在するのかそれとも映画のための仮の社名なのか真偽を疑ってしまう。 上京青年男女を巡る出会いと別れ、喜怒哀楽は大筋期待通り。 松竹にしては珍しく企業スポンサー色の濃い作品である。そのため都会からの威光に抵抗(？)する地方色を排除するよう考慮したのでしょうか？ 『男はつらいよ』『釣りバカ日記』とはかなり趣向が異なる。

エリート将校ゆえ惚れた腫れたで所帯を持つわけにはいかない。それゆえ選択肢の少ない中で伴侶を決めるのはいつの時代も同じこと。 ドラマなので登場人物は出来すぎ。 『姦通罪』40年後の評価は如何であったか？

公開当時テレビで放送されていた警察ドラマとずいぶん印象が違います。 健さん演じる巡査部長は定年前で辞職するかどうか迷います。一方で巡査は職務にひたむきです。 特命係という部署はまだなかったのでしょう。

飲酒も喫煙も大いに奨励されていた昭和の末期の頃の作品。 家庭内暴力までシーンに入れるからこれも真似するバカがいたはず。このあたりもう少し知恵を出して欲しかった。

お茶の間では過激な性描写があります。(R15レベル) 脚本そのままなのか？監督が増幅させたのか？ 21世紀の地上波ではあり得ないのですが、当時はカットするほどの表現ではなかったのでしょう。

30歳以上の俳優はそこそこ名前は売れている。 将来性が確約されていない若手俳優が大抜擢であれ試験的であれ随所で起用されている。 犯罪絡みのストーリーなので配役には相当神経を使ったはず。 映画の製作目的はさておき、後世の大俳優となった時代に氏を知った者としましては本作品における駆け出し時代は実に興味深い。 ほぼ無名に等しい若者にチャンスが与えられる世界のひとつが映画産業であるのは間違いない

巨額の広告宣伝費・交際費の流用の原型はここにあったのです。当時の若手社員の多くがこの作品を見て『いつかは俺も・・・』と心に誓い日々の激務に邁進した？かもしれません。 それにしても最先端の鉄道技術の結晶(新幹線)が情欲のために使われてしまうとは・・・

発端はノルマンディー戦における唯一の東洋人捕虜の存在から・・・ということらしいのですが信憑性が怪しい。 真偽はさておきストーリーの展開は間断を許さぬ凄まじい出来でさすが韓流ここにあり！であります。 アメリカ軍の捕虜になって今度は太平洋戦線に送られて日本軍の軍人(日本人)軍属(朝鮮人)に降伏勧告や捕虜尋問をするとか戦後の社会での二人の関係の変化も見たかった。 一本の上映作品ではとても収まりきれない壮大な話だと思います。

組合組織化を映画化するなどとんでもないという時代が長く続いたのは間違いない。(あったとしてもコメディとか風刺的) 活動の舞台となる企業は軽工業で老朽化著しい紡績工場である。 おそらく諸般の事情で工場閉鎖の寸前だったかもしれない。 組合ができたのは良かったけど果たして企業は存続したでしょうか？ 閉鎖する前に映画を製作して後世に遺すという企業遺産もあり得るか。

誘拐・身代金要求・張り込み・受渡場所の変更といった展開は普遍性があるのか先が読めてしまうのですが、何かと簡略化してしまう21世紀のドラマとは比較にならぬリアリティーを感じます。

長距離列車の運行と各種乗客サービスにこれだけの大人数が乗務していた時代があったのです。 人情たっぷりなので東映より松竹のほうが良かったのでは？

日本人にとってハワイとは？ 19世紀後半は移住の地。汗(労働)と涙(差別)の苦難の日々。 20世紀前半はロシア艦隊を撃破して次の仮想敵国となった国の最前線。アメリカ人としても緊張感漂う最前線。渡航制限があっても不思議ではない。 20世紀後半。西太平洋の危険は除去されました。どうぞ安心してお越しください。てか？ 日本人ならビーチより先ずは慰霊だろう。

親父は第二次世界大戦、兄貴は朝鮮半島で戦場をリアルに体験して帰国したら戦争とは・・・と聞いた徴兵年齢寸前の若者が不安になるのは当然である。 恐れは無用、とばかりに冒頭から最新の戦車が登場、駐屯地にいる美女、最後にこれまた最新鋭の戦闘機を見せる。 赤ん坊は戦争になったら死ぬ確率が高いという暗示かも。

内容は観客(=日本に不満・敵がい心有り)に今一度この事態を冷静に考えようじゃないか!というまともな仕上がりなのですが、日本人役が日系人なので日本人としては不満が残る。 日本は当時こういう映画はなかったと思う。留学熱を煽る映画・テレビドラマは沢山あった。経済大国になった陰にこういう人々の努力があったと知るべきです。